池田一さんのメッセージ

『村丸ごとアートにしてくれんか!』の一声でスタート


 木口屋集落は、鹿児島県枕崎市、標高140mの丘にある、いわゆる限界集落(約30戸、平均年齢70歳超)ですが、東西南北約1kmの広さの中に、茶畑、ミカン畑が点在し、まさに里山の中に集落があるといった感じの村です。背後の旗山には、集落の旗がひるがえり、眼下には枕崎の市街地、そして港、東シナ海。「これは、天空の集落だ」と直観しました。


 かって背後の山が金山の採石場で、その採石作業に伴い、地下水に影響が出て、兄弟までもが争う水の奪い合いの時代もあったとのこと。

 しかし、その少ない水を共同使用する、即ち共同浴場を造り、当番で管理するという方法で難題を乗り切り、稀にみる共同性の高い集落に生まれ変わったとのことのようです。枕崎市が全面的に応援するのも納得出来るところです。

 その集落に、4人の保育士たちが1年がかりで民家を改修して、子育て支援グループ「自然花(じねんか)」を立ち上げ、運営しています。 その活動を地元の人たちが応援して、いろんな親子連れが訪れ、自然の中でのワークショップ、自然塾、宿泊体験など、活発な活動が続いています。

 おかげで、平均年齢70歳の村が生き生きとした雰囲気になり、お会いした老人会の会長は、「気持ちが一段高まった」、変化が大事だと、大きな手振り身振りで表現される。そんな既に土台が出来つつ有る流れの中で、私に村丸ごとアートの要請があったというのが経緯です。それに、長年鹿児島での私のアートプロジェクトをプロデュースしてきたNPO法人エコ・リンク・アソシエーション(代表・下津公一郎)が、実現化への資金集めなどの運営を引き受けてくれることに。この一連の恊働的な関係のおかげで、「限界集落丸ごとアートなど不可能」という危惧を超え、 「限界集落だからこそ生まれる、地球の家づくり」という大規模な長期間アートプロジェクトが構想出来たのです。 そして、限界集落を<地球の家>に変容させるという、多分前代未聞の内容とスケールの3カ年プロジェクトがスタートしました。

 鹿児島県の「かごしま文化芸術活性化事業」に採択されている今年度は、3つの広場、空地に、<地球の家>を構成する空間づくりを行います。全長50mの「矢形の水広間」、眼下に東シナ海が見下ろせる「天空の間」、そして小川に沿った「緑の書斎」を造ります。8月6日の、公式プラン発表の会には、集落の人たちをはじめ、関係者、東京からの人も加わって、約70名が集まりました。 

 「矢形の水広間」「天空の間」「緑の書斎」は、来年1月中旬の完成、そして公開展示を目指して、現在竹の伐り出し、材木集めなどの、材料調達がスタートしています。その後は、「成長するアート」がキーワードに。人間活動の所産としての構築物と生態系、その共生関係をどのように育てていくのか。植生と共に、人々の参加という人間活動と共に、年々歳々構築物が変わっていく。どのように育てていくのかは、<地球の家>の住人の想い、願望です。

 「アートの境界がなくなって、初めてアート足りえるアート」ということに。この延長にやっと地球と向き合うアートが出現してくる、と予感しています。Earth Art (地球のアート)と、私の作品が最近呼ばれるようになったのも合点出来ます。

 このプロジェクトが立ち上がったキッカケは、2006年~2008年の枕崎を流れる花渡川(けどがわ)での[Moving Water Days]プロジェクトを通じて、多くの市民や県民の方と恊働した実績があったからです。その成果は、2007年の世界環境デイ展(オスロ、ノルウエー等)や国連本部でのシンポジウムでも展示、発表しました。

    http://art.eco-link.jp/R.kedo_AP2006/report.htm

    http://art.eco-link.jp/R.kedo_AP2006/gougai_2007_5_1.html

    http://art.eco-link.jp/R.kedo_AP2007/

    http://art.eco-link.jp/R.kedo_AP2008/


 「限界集落だからこそ生まれる、地球の家づくり」という大規模な長期間アートプロジェクト。

  既に、この<地球の家>アートプロジェクトには、「是非参加したい」「地球の家の住民になりたい」など、鹿児島県外の、多くの方から反響と期待が寄せられています。何処にいても参加出来る仕組みをもつウェブサイトを、現在構築中です。


 主催/NPO法人エコ・リンク・アソシエーション(代表・下津公一郎)

 共催/NPO法人子育てふれあいグループ「自然花」NPO法人アースハーバー

 後援/枕崎市、枕崎市教育委員会、南日本新聞、MBC



   木口屋集落<地球の家>アートプロジェクトには、限界集落、子育て、生物多様性といった現実的な問題を含んでいます。

   いろんな立場から関心を広げていただきたいプロジェクトなので、どのような進展になるのか、今後とも随時報告していく予定です。

ページの先頭へ